【本】#053 ビートたけしと北野武 / 近藤 正高

ビートたけしと北野武
ビートたけしと北野武

ビートたけしと北野武のことを常に知りたいと思っているわたくしですから、この本を手に取るのは自然です。

ビートたけしさんが提唱する「振り子の理論」、すなわち「相反するポジションの片方に振り切れれば、その勢いをもってもう片方にも振り切れる。それは笑い×知性であったり、エンターテインメント×暴力であったりする」に鑑み、「ビートたけし」と「北野武」という二面性を軸に彼の半生を追っています。その「二面性」を軸とすべく、いままで彼がテレビドラマ等で演じた役(しかも犯罪者)に彼自身を投影している点がおもしろい。犯罪者は、お笑い芸人とは真逆です。

わたくしは年齢的に存じ上げなかったのですが、現実に起きた犯罪や社会問題を採り上げた数多くのテレビドラマにおいて、ビートたけしさんが主役として演じていたことに、まず驚きました。そもそもそういったテレビドラマがあったこと、そういったテレビドラマを制作するにあたりキチンと当事者を取材し放送の了承を得ていること。テレビがちゃんとしていた時代みたいなものを感じてしまいました。

さて、では本書でどれだけビートたけしさんのことを書いているかというと、すこし物足りない印象。テレビドラマで演じた犯罪者とその事件に対する言及が目立ちました。
これ自体は悪くなく、わたくしは楽しく読めましたが、ビートたけし/北野武目当てで本書を購入すると肩すかしを喰らう可能性があります。

著者のかたも「『タモリと戦後ニッポン』の続編」とおっしゃっているとおり、稀代のお笑い芸人からその時代の社会を視ることを書籍化の目的としているのであれば、それには充分な内容なのですが、タイトルからそれを見通すのは難しいな、というのが率直な意見です。

当然ながら、ビートたけしさんが演じた人間とその背景、そしてビートたけしさんとの二律背反ならびに共通項、この論考には成功してますし、非常に興味深いものがありました。「振り子の理論」の証左にもなっています。
放送前にお笑い芸人であるビートたけしさんが犯罪者を演じることに懐疑的な世論と、放送後に巻き起こる好意的な反響。それにはやはり、ビートたけしさんの演技力もさることながら、「ビートたけし」と「犯罪者」についてのまったく逆の印象。そして「北野武」と「犯罪者」へのある種の共通項があったからといえるでしょう。
つまり、「ビートたけし」と「北野武」は同一人物であり、人格はまったく別である。それを明快に論じている本書は、一読する価値があるように思えました。

タイトルからこの内容を見通すことは難しいですが、その内容に間違いはありません。オススメです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です