スーパーファミコンの帰り道

テレビゲームに理解を示していなかった生前の父親が、どういう風の吹きまわしか「ファミコン買ってやる、買いに行こう」と言い出したのが、小学校3年生くらいのころだったと思います。
わたくしは大いに喜び、父親と一緒にゲームも売っている近所の本屋さんに行きました。休日の昼下がり。いい天気だったことをよく覚えています。

スーパーファミコンの本体と、スーパーマリオワールドのカセットを購入しました。
包んでもらったり、保証書に店印を押してもらったりしている間、父親は「オレ先帰ってるわ」と言い、帰宅しました。カネだけ払って立ち去るって、いま考えても最高にクールだなと思います。

小学生の小さなカラダに比較して大きなスーパーファミコンの箱をだいじに抱え、ひとり帰路に就くわたくし。
ただし、ここは悲しいことに東京都足立区。白昼だろうとカツアゲ野郎が本当にいるので、戦地と同等の危険性を加味して行動しなければなりません。「新品のスーパーファミコンなんて持っていません」という表情(かお)をしつつ歩かなければならないのです。

団地に併設されている小さな広場の横を「新品のスーパーファミコンなんて持っていません」という表情(かお)で歩いていると、その広場から中学生くらいの男の人の声が聞こえてきました。

「おーい! そこのスーパーファミコン持ってるキミ〜!」

— GAME OVER —

「バレるの早いな!」と思うのと同時に、「おとうさんに買ってもらったスーパーファミコンを、この人たちに盗られる」と思い、一気にカラダがこわばったのを覚えています。
恐る恐る、声のする方を向きました。

「ごめん、ボールとって!」

わたくしの足元を転がるボール。わたくしはスーパーファミコンをいったん置き、ボールを投げ返しました。

「ありがとう!」

わたくしが投げ返したボールを受け取り、そのボールでキャッチボールかなんかを始める、中学生くらいの男の人たち。助かった……!
そこには悪意は介在せず、天気のよい休日の昼下がりが、ただ平等に展開されているだけでした。俗に言われる「足立に仏」です。

帰宅しさっそくスーパーマリオワールドで遊ぼうとしたら、電源アダプタとテレビにスーパーファミコンをつなげるケーブルが別売りであることを知りました。また買いに行かないとじゃん……。
すでに帰宅済みの父親に追加のおカネをもらい、同じルートで同じ店に行き、電源アダプタとケーブルを購入したのです。

父親には「え、まだカネがいるの?」と言われ、本屋さんの店員には「アダプタとケーブルが必要であること言いませんでしたっけ?」と言われ、キャッチボールの中学生には「あれっ、さっきのスーパーファミコンの彼!」というカオを往路と復路の2回されました。ここは小3に厳しい足立区(せかい)。

この箱のデザインにワクワクしたなあ
この箱のデザインにワクワクしたなあ

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