【本】#055 理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性 / 高橋昌一郎

理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性
理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性

理性には限界があるのかなと常に考えているわたくしですので、この本を手に取るのは自然です。

以前ご紹介した『知性の限界』を含む「限界シリーズ」の1冊目が本書です。『知性の限界』がとてもおもしろかったので本書も楽しみに読み進めました。
本書はシンポジウム形式で、いろいろな立場をとる学術専門家や一般人の参加者が、「選択・科学・知識」の限界を議論していく内容です。驚くほどサクサク読み進めていけます。そしておもしろい。

「選択の限界」では、選択行為における「限界」を議論していきます。
選挙による選択は、いかなる方法であっても「限界」があり、民意を正確には反映できないこと。それを「卒業旅行の行き先希望をまとめあげる」ところから展開していきます。「よく考えればたしかに!」の連続です。有名な「囚人のジレンマ」も引き合いに出し、不可能性定理と合理的選択の限界が解りやすく書かれています。

「科学の限界」では、科学的考察における「限界」を議論していきます。
客観的事実を重ねて法則性を導き出す科学的考察でさえ、「限界」があります。「客観的事実」は本当に客観的なのか。「導き出す」という行為字体が妥当なのか。いまある常識にたって仮説を実証していくのが科学ですが、いわゆる「常識」の脆弱性を、天動説/地動説やシュレディンガーの猫などを例示して、不確定性原理と科学的認識の限界を議論していきます。

「知識の限界」では、論理的思考における「限界」を議論していきます。
人間が言語と数学で世界に構築している論理でさえ、「限界」があります。究極的には真/偽のどちらかになる論理、これはすなわちわたくしたちの住む世界における根幹ですが、それすら「どちらともいえる」「どちらともいえない」状況に陥る蓋然性を否定できません。「抜き打ちテストのパラドックス」や「完全数は有限か否か」といった明確な解のない事例を挙げつつ、不完全性定理と論理的思考の限界を議論していきます。

読んでいるなかで「知識の限界」の章では限界性の理解に難しいところが多かったですが、「選択の限界」「科学の限界」の章ではその限界性の理解に追いつくことができ、整理して考えれば考えるほど人間の思考の限界を垣間見ることができました。
こうして書いてみると難しい内容に読めますが、本書は会話形式のため非常に平易な文章となっていてとっつきやすい内容となっています。究極の理性の、その一端をサラッと味見してみたい方にはオススメです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です