地獄が展開されがちだった実家

20年以上昔、わたくしの実家のトイレは汲み取り式でした。
時代は平成で地域は東京23区内でしたが、わたくしの実家の周辺は下水道が未敷設だったのです。暗渠に囲まれたところに実家が位置していたのもその理由かも解りません。

それゆえ、どの程度の頻度だったかは覚えていませんが、バキュームカーがし尿を汲み取りにくるのです。それがまた、ものすごくくさい。
し尿を積載したクルマが到着し さらなるし尿を実家横でチャージして出発していくワケですから、地獄と地獄が織りなすザ☆地獄が最寄りで展開されているのと同義です。
同級生の家で汲み取り式のトイレなど見たことがなく、小学生ということもあり、とても恥ずかしかったのを記憶しています。

話は変わりますが、わたくしの母親の屁が異様にくさいことがありました。くさくないこともあるのですが、何回かに1回は強烈なのです。たぶんあれ、サムシングが出てたんじゃないかな。
バキュームカーは公道を走ってきて最寄りに地獄を展開するので視覚と嗅覚がシンクロし心構えができますが、母親の屁は確率論をはらんだインビジブルかつインスタントな地獄です。急転直下に地獄が展開されはじめると、生前の父親はまったく消臭効果のないマイルドセブンを緊急的にふかし地獄に抗おうとするのが常でした。2本同時に吸っているのも目撃しました。マイルドセブンの副流煙のほうがまだマシだったのです。

そんなワケで、母親の強烈かつ異様にくさい屁に、わたくしはバキュームカーのそれを見たのです。

ただ、当時小学生だったわたくしは、し尿汲み取り車に「バキュームカー」という名称が与えられていることを知らずにいました。
母親が急きょ最寄りに地獄を展開したときに、「バキュームカーのニオイがする〜!」みたいに的確におもしろく言いたかったのですが、し尿汲み取り車の固有な名称が解らない(「し尿を汲み取って集めているクルマ」というのは知ってた)(小学生なのに「し尿」って言葉を知ってた)。
そして、とっさに出たのが以下だったのです。

「おかあさん、下痢屋さんのニオイがする〜!」

その場に居合わせた姉が大爆笑。死ぬほど笑ってた。
「下痢屋さん」という、シンプルながらもアイデンティファイな単語を生み出したことに、いまでも自画自賛しています。あの時のわたくし、見事だったぞ。

いま考えると「下痢屋さん」って失礼だな。
いま考えると「下痢屋さん」って失礼だな。

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