地下鉄の安全性を説くために未来から来たイトウくん

小学校4年生くらい(1992年ころ)だったと思います。テレビでたまたま放送されていた『地震列島』という映画を、姉と観ていました。昭和のパニック邦画です。

昭和のある日に大地震が東京を襲いました。桁が落ちる高速道路、崩壊するマンション、爆発するコンビナート、そして水没する地下鉄。
それら異常事態の中で生きる人間たちを描いた映画でした。

端的にいうと、その映画のおかげでわたくしは地震がトラウマになってしまいました。「いつか東京に大地震が起きたとき、こうなるのか」と。
ちょっとの地震でもびくびくする日々が、その後20年近く続きます。

とくに恐ろしかったのは、路盤が崩壊し水没する営団地下鉄銀座線でした。
地面に埋まっている地下鉄です。大地震が発生したら、いともたやすく崩壊することでしょう。

後日、何の気なしに、地下鉄に造詣の深いイトウくんに「地震発生時における地下鉄の危険性」について尋ねました。小学校4年生当時の話です。

わたくし「やっぱり地下鉄は地震に弱いよね。崩れるよね」
イトウくん「いや、地下鉄は地面の中にあるから、地震の揺れに反発することなく揺れて、逆に安全だよ」
わたくし「そうなの? 日比谷線も安全?」
イトウくん「そうだね、銀座線よりも深いから、銀座線よりかは安全じゃないかな。深ければ深いほど安全だよ」
わたくし「そうなんだ!」

いま考えても、小学校4年生とは思えないほどのカンペキな回答。理由も正しい。
たしかに2018年現在においても、「地震発生時、揺れに対して地下は比較的安全」というのが通説です。20数年後の「意外な通説」を、1990年代前半ですでに携えていたイトウくん。未来から来たのか

その後、1995年の阪神淡路大震災で高速道路の桁は落ち、マンションは高層部の重みに耐えきれずに低層部が崩壊しました。2011年の東日本大震災では、市原のコンビナートが爆発しました。
『地震列島』でやや大げさと考えられていた描写は、悲しくも現実のものとなってしまったのです。

いっぽう、「地下鉄の水没」は現実となりませんでした。
前述の阪神淡路大震災、2018年の大阪北部地震で地下鉄を擁する都市を直下型地震が襲いましたが、地下鉄は比較的安全だったと言えます。阪神淡路大震災では神戸市地下鉄の天井崩落がありましたが、高架鉄道に比較すると被害は軽かったと思います。
ここでもイトウくんの発言の蓋然性が立証されたのです。

イトウくん、やっぱり未来から来た人だったのかもしれません。

銀座線が水没する描写がアレすぎて、営団地下鉄から抗議があったようです
銀座線が水没する描写がアレすぎて、営団地下鉄から抗議があったようです

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